Milestone 特集 ~子午線の原石達~
西明石パパたこ商店会のメンバーである、どんな時も明るく楽しい雰囲気の高根さん。 彼の笑顔の裏には、人知れない苦労が隠れていました。 それでも笑顔を絶やさない彼の原動力、人生の転機、想いについて少しお話しをうかがいました。

加古川市内でBARの雇われ店長をしていた高根さん。
独立して最初に持った自分の城は、明石市魚住町、カフェとイタリアンの店でした。
開店から2年。
順調に常連客も増え、これからというタイミングに最初の転機が訪れます。
借りていた店を不動産契約上の理由で出なくてはいけなくなったのです。
(高根さん)
忘れもしません。2018年の5月、店を閉じたんです。ストレスから病気にもなり、すっかり気力もなくしました。
体調を崩した高根さんは、何をする元気もなく、ふらふらとその日をただ過ごすだけの日々を送っていたそうです。
そんな時、常連だったお客さんから空き店舗の情報が届きます。
(高根さん)
自分はいったい何をやってるんだろう…と。
それからは真剣に店の再開を目指して、店を探し始めました。
西は姫路から東は西宮あたりまで。半年探して、縁あって今の西明石駅近くの店に巡り会えました。


さあやるぞ!と意気込んだのも束の間、自動車事故に遭い、幸い怪我は軽かったものの、車はかなりの修理費が必要に…。
修理費に店の改修費。出費ばかりがかさむ中、くじけそうな気持ちにそれでも自分を奮い立たせて、店のオープンにこぎつけた矢先、新たな試練が襲います。
(高根さん)
新型コロナウイルスが騒がしくなってきても、当初はまだましだったんですよ。20時までは営業ができたから。それがだんだん規制が厳しくなってきて、そこに「緊急事態宣言」。 全く人が来ない。常連さんだって来ない。先行きに不安しかなかった。
店を開けても誰も来ない。
だからといって、仕入れをとめるわけにもいかない。
このまま待って、じっとしていても何も変わらない。
考える日々の中で、高根さんの中でやりたいことが形になっていきます。
(高根さん)
テレビで、 ピッツァ作り未経験の人が0から独学で挑戦している姿をやっていて。
それを観ていた当時アルバイトしていた子が「私、 ピッツァ好きなんですよ!」って。
その時、ふっと自分にもできるのでは…と思ったんです。


西明石には「西明石パパたこ商店会」という集まりがあります。 地元で店を持つオーナー有志が集まって、 地元を盛り上げる為に様々な活動をしています。
その会の仲間である古志さん(明石夢工房/オーナー) に高根さんは相談。
「客数を減らしてでも俺は冷凍をやったよ」
古志さんのその言葉に突き動かされるように、 高根さんは自身の店のカウンターだった3席部分を潰す覚悟を決めました。
不安な中にも、少しずつ動き出した『まるべろ』。
まさに、このコロナ禍の非日常の日々が、看板商品の冷凍ピッツァ開発につながっていきます。
ここから高根さんの戦いが始まります。
カウンター席を潰し店の通りを良くして、その場所に本格石釜、急速冷凍機、冷凍ストッカーを設置。
大阪のラボに行き、勉強をし、自身がこの人と信じた日本一のピッツァ職人のいる名古屋に出向きます。
行列店の、オーナーがいるという土日の行列に並び、 店が終わるのを待って教えてほしいと直談判。
彼の熱意に協力を約束してくれた店に通って、日夜ピッツァ作りに明け暮れる日々を送ります。
(高根さん)
前の店でもピッツァは出していたんですが、生地は購入して提供していました。 生地作りを始めると本当に難しいんですよ。その日の気温や湿度、ちょっと違うだけで仕上がりが変わる。
全てが0からのスタートでした。
今では『まるべろ』の看板商品のピッツァ。
コロナ禍があったからこそ生まれた商品だったのです。
地元の食材にこだわり、高根さんが一枚一枚丁寧に手ごねして焼き上げるピッツァ。
その味を求めて、お客様が訪れます。
今では店内での飲食はもちろん、オンラインショップ『LUCA BUONO』を通じて全国発送もしています。
明石のふるさと納税の返礼品にも登録されています。
高根さんにとってのmilestoneは?
(高根さん)
お店の空き情報をくれたのは、 いつも来てくれていた80歳のおばあちゃんでした。
僕はおばあちゃん子だったので、 ご来店いただけることがとても嬉しかったんです。
数年前に他界した祖母と、どこか似ている雰囲気のおばあちゃんで…。
会うたびにいつも「店長頑張ってよ!行く場所なくなってまうやんか 」と言ってくれて。
今思えば、その言葉が運命の転機だったかもしれません。
今までやってこられたのは、ずっと支えてくれている、 偉大な母とスタッフのおかげですね。
どんなときも相談にのってくれて、本当に助けられてることがほとんどです。
僕は運が良い!こんなにピンチを助けてくれる人がいるなんて。
これからもまわりに感謝して、 チームとして頑張っていけたらと思っています。
僕がいつも自分に言い聞かせてる言葉があって。
「SLOWLY BUT SURELY」。「ゆっくり、でも確実に」という意味です!
飲食店は毎日とても忙しく、拘束時間も長く、 体力的にも精神的にも大変ですが、ゆっくりでも確実に前に進んでいきたいと思います。
先日、高根さんの焼くオンラインショップ限定ピッツァ「 明石の惠み3枚セット」は、令和6年五つ星ひょうごに選定されました。
この商品は兵庫県産全粒粉を使用した地産地消のピッツァ。
蛸・鯛・海苔などの海の幸を贅沢にトッピングしています。
小麦の生産を地元の農家に委託し、 国産小麦として商品に活用することで地元に貢献しています。
焼きたての香ばしい香りのするピッツァを味わってもらいたいと、瞬間冷凍にもこだわっています。
(高根さん)
この商品の全国販売を通し、兵庫県の特産品を広く知ってもらい、 地域ブランドを確立したいと考えているんです。もちろん、地元の方にも是非食べていただきたいですよ!
逆境を乗り越え、自ら道を切り拓こうと努力してきた高根さん。
その夢が叶う日は、そう遠くないのかもしれません。


※「五つ星ひょうご」とは。
ひょうご五国(摂津・播磨・但馬・丹波・淡路) の豊かな自然や歴史・文化を生かした産品の中から、 ひょうごの良さをアピールする「地域らしさ」と、 これまでにない「新しさ」を兼ね備えた商品を「五つ星ひょうご」 として選定し、全国に発信することにより観光・ 物産振興を図っています。
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。
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高根健人さん(イタリアン酒場まるべろ/オーナー)vol.1
西明石パパたこ商店会のメンバーである、どんな時も明るく楽しい雰囲気の高根さん。 彼の笑顔の裏には、人知れない苦労が隠れていました。 それでも笑顔を絶やさない彼の原動力、人生の転機、想いについて少しお話しをうかがいました。